ドノヴァン・フランケンレイター DONAVON FRANKENREITER

date: 2004.08.05.
place: AOYAMA, TOKYO

連日のように乾ききった東京では夕暮れを迎えても逃げ場を失った熱波が僕の周りを漂っている。ベイサイドに競い合い乱立している高層ビル群の影響だとニュースキャスターがしゃべっていた気がするけれど、なんだか手が届かない遠くの場所のことのように思える。
フジ・ロック・フェスティバル、その後、鎌倉・材木座海岸でのサプライズド・ライブをはさんで、短いジャパンツアーを行ったジャックとドノヴァン。長年の友人同士である彼らは、今年からジャックが主催するBrushfire Recordsに所属するアーティスト同士としてこれまで以上に活動をともにしている。
クールダウンの暇すらないこの夏のように、いやそんな夏だからこそ、アコースティックギターを手に旅を続けていく彼らを僕は追い続ける。それは高速度でスクラップ&ビルドを続けている都市のスピードを少しでもこの手でモデレートしたいと願う僕達の意思が呼び寄せている静かなTIDE(潮)かもしれない。

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W:昨年のライブと今年のフジロックでは表現スタイルが変わったようだね。
D:昨年はまだ新人で唄い始めたばかりだったし、自分の歌を模索している状態だった。あの後アメリカに戻って、Brushfire Recordsと契約して、ジャックやマリオと一緒にアルバムを作り、一緒に演奏を楽しめる仲間に出会った。ようやく自分が行きたかった場所に辿りつくことが出来たって気がしてるよ。

W:去年よりもレイドバックしてるよね。
D:ジャックと一緒にアルバムを録音してから、スローダウンして余裕を持つことを学んだと思うんだ。今はピアノやベースプレイヤーがいて、皆で一緒に空間を満たしていくことが出来る。だからもっと緩やかなグルーブを奏でることが出来るんだと思う。

W:君は、いつも誰かとの関係やその親密さについて唄っている。
D:僕はそのことをいつも大切に思っている。でもそれは決して限定的な関係じゃないんだ。皆には僕の曲を聞いたときに、自分自身で解釈して自分の曲にして欲しいと思っている。僕の曲は友達や家族と楽しい時間を過ごしたい人々のためにあるし、皆がハードな時間を送っている時にこそ聞いて欲しいんだ。

W:そして君の歌は今この場所・この時間を誰かとシェアすることへのポジティブさに満ちている。
D:ポジティブであること。今のこの瞬間を楽しむこと。まさにそれが僕のスタンスなんだと思う。ゴールや未来のことを考えすぎたり、悩んだりするのは好きじゃない。今この瞬間をどうポジティブに楽しめるか、それが一番重要だと思う。これが僕の正直でリアルな気持ちだよ。

W:それは歌を唄いだしてから強く思うようになったのかな。
D:たくさんサーフィンをして、たくさん旅をすることで気が付いたんだと思う。
世界の色々な所でいつも様々なことが起きている。例えそれがあるローカルな場所の出来事であったとしても、それは僕にとってグローバルなメッセージになる。皆色々な音楽を聞いているけど、結局のところ音楽から受け取るメッセージは世界中で同じなんだ。音楽は皆をひとつにしてくれる。
サーフィンは確かにその気持ちをえてくれたけど、表現することは出来ない。サーフィンをする時は一人だからね。僕は音楽によって僕は初めてそんな気持ちを表現し皆とシェアできることを学んだんだ。音楽は本当にスペシャルなものだと思う。まさに「今この瞬間」をシェアすることが出来るんだ。旅をすればするほど、そのことが判ってくるよ。特に日本では本当にそのことを感じるよ。

W:日本人は誰かとシェアするという気持ちを確かに持っている気がするよ。
D:聴衆が静かでもエネルギーを感じられるし、皆が僕を見つめていて、皆が僕の音楽の一部になるような感じがするんだ。不思議な感じだよ。でも、アメリカでは滅多にそんなことはない。日本の文化は皆がお互いをレスペクトしているというところが素晴らしい。それは他の多くの国が学ぶべきことだと思うね。

W:今は機械を通してコミュニケートすることには便利な時代だけど、逆に言えばそんなプリミティブな快楽を失いつつある時代だとも言える。
D:確かにその通りだよ。今最も難しいのは、自分が愛している人に、それを真っ直ぐに表現することだと思う。男でも女でも、沢山の人が表現できずに苦しんでいる。でも人生はアンハッピーに過ごすには短すぎる。だから僕の音楽を聴いて一瞬でもいいから外に座って波の音を聞いたり木々を眺めてみるとか、そんな風に思ってくれたら嬉しいな。どんなに小さな事だとしてもきっと人生が変わると思うんだ。
5分でいいから深呼吸して、自分が何をしたいか、誰に何を言いたいかを考えたらいいと思う。言いたい事を胸のなかに抑えて暮らしているのって、心の中を侵食してしまうと思うんだ。

W:だから僕はメローでスウィートな君の歌の中にタフネスを感じるんだろうな。タフに生きていくにはどうすればいいんだろう。
D:それは、自分自身に自信を持つことだと思っている。自分で自分を愛して、自分自身を楽しむことだよ。過信するとか威張るという意味ではなくて、自分自身であることを心地よく感じるということだと思う。

W:君が旅から得た価値って何なのだろう。
D:15歳のときにインドネシアに初めてサーフトリップをしたんだ。それから、オーストラリア、ハワイ、サウスアメリカ、サウスアフリカ、アイスランドにも行ったよ。サーフィンは僕を世界中のクレイジーな場所に導いてくれる。そこで知らない人々と接することがとても好きだよ。これはプライスレスな経験だね。でも僕はこうして旅をしていることを幸運だと思っている。
旅をするにはお金もかかるし、このインタヴューを読んでいる人は「なんだよ、こいつ!そんな簡単に旅に行けるわけないだろう。」って思うかもしれない。
でも、自分の国のなかでも十分旅はできるよね。東京に住んでいる人が福島に行ったり、鎌倉の竹林に行ったりとかね。だから遠くに行く必要なんてなくて、毎日仕事に行く道、右に行くところを左に曲がってみたり、ちょっと回り道をしてみることが大切だと思うんだ。

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© 2004 Washio Kazuhiko



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