シム レッドモンド バンド SIM REDMOND BAND

ハーモニーが降りてくる場所/ シム・レッドモンド・バンド

SRB_002.JPG
昨年から注目度上昇中の米国のロックバンド、シム・レッドモンド・バンド(Sim Redmond Band)。 この日本でも草の根的な盛り上がりでじわじわとオーディエンスの支持を高めている彼らが、2月19日に行われたGreen Room Festivalに合わせて再び来日した。 
(2005.02.18. Tokyo / c 2005 Washio Kazuhiko)
--------------------------------------------------------------------------

鷲尾(W):僕はこのところ朝起きて出掛けるまでの時間、君達の新しいアルバム『シャイニング・スルー』を聞いているんだよ。自分の中をなんだか上手く整理させて、新しい一日をフレッシュな気分で始めることが出来る、そんな気がするんだ。それで、こんな音楽を創っている人たちってどんな人たちなんだろう、どんな町でどんな暮らしをしているんだろう、そんなことをあれこれ考えていたんだ。君達は、NY州のイサカ(Ithaca)という町の出身だよね。それはどんなところか教えて欲しいんだけど。

Asa(Dr) :そう、僕らは皆NY州のイサカって町で暮らしているんだ。ここは小さな町なんだけど、毎日を暮らしていくには本当に気持ちがいい場所なんだ。メローでリラックスしていてとても快適に過ごせる場所。森や渓流、そして美しい滝に囲まれている。音楽についてもとても熱心な場所で、楽しめる場所が一杯あるんだ。自分達の生活や音楽にとっての栄養が一杯ある土地だね。だから僕らの音楽はこの町自体にとても影響を受けたと思う。

Dan(B) :イサカの人々は音楽をとても大切にしているんだ。こうして日本に来るとイサカの街を思い出すよ、日本人も音楽をとても大切にしている感じがするからね。

W: イサカにはどうやって行けばいいの?

Sim(Vo,G) :マンハッタンから北東に向かって車で約5時間かな。イサカは大学町なんだ。コーネル大学があるところだよ。

W:カリフォルニアのバークレーには行ったことがあるんだけど、あんな感じかな?

Sim:そうだね。バークレーよりはもっと小さい町だけど、感覚的には近いかもね。

W:このバンドはどのようにして始まったのか教えてもらえるかな。

Dan :皆別々の高校だったけど、とても小さい街だから、高校生のときからお互いに知り合いだったんだ。

Sim : Asaと僕とは兄弟なんだ。だからずっと小さい時から良く知っている(笑)。

Asa :本当は僕の方が兄なんだけど、いつもSimの方が兄だと思われている(笑)。

Jordan(G) :僕は16歳の時に、有機野菜や果物の栽培をしているSimのお父さんの仕事場にバイトに行って知り合ったんだ。

Uniit(Vo) :私だけがイサカの出身じゃないの。99年にあの町に引越してきたばかり。私もずっと歌を唄っていて、ある晩Simたちと一緒に演奏することになったの。その時、皆と知り合って、このバンドに参加することになったのよ。

W:実は僕はイサカという町の名前をずいぶん前から知っていたんだ。地域通貨(Local Currency)のことを少し調べていた時期があって、イサカは米国で唯一成功している地域通貨がある町っていう風に聞いた。米国で地域通貨が成功している、まだコミュニティが残っている町があるんだってことに驚いたんだ。実際はどうなのかな?

Dan :それは『Ithaca Hours』のことだね。みんな君のように米国で地域通貨を運営している町ということで驚く人はいるようなんだけど、イサカという町は実際とてもリベラルで平和的な町なんだよ。10平方マイルを現実(リアリティ)に囲まれた政治的にはオアシスのような町なんだ。

W:そんな豊かでリベラルな環境の中で君達が生まれ育ったっていうことが、そのまま音楽の中にも現れているって気がするよ。Sim Redomond Bandの音楽には、例えば、ロック、カントリー、レゲエ、ジャズ、カリビアン、などなど、色んなリズムがミックスされているね。

Asa :それは結局一人ひとりの中にあるアイデアが持ち寄られてひとつになっていった結果なんだ。僕らはそれぞれがとてもユニークで特徴的なアイデアやプレイスタイルを持っていると。Jordanのギターも周りの他のギタープレイヤーを比べたら本当に特徴的だと思うし、SimやUniitの声もとても際立っている。それらが自然にひとつに合わさった時に、こうしたサウンドが生まれたに過ぎないんだ。

Dan : Asaと僕は以前アフリカンドラムを叩いていたこともあるんだ。他にも様々な民族音楽を自分達で演奏したりする。大好きなんだよ、そういうことが。

Sim :コーネル大学があるから、様々な国からの学生も住んでいるし、色んなミュージシャン達がこの街を訪ねてくる。そのことは凄くラッキーだと思うよ。

W:いろんな音楽的な要素が合わさっている場合、以外と実験的な試みであることを意識しているなって聞く側が感じるという場合もあるんだと思うんだけど、Sim Redmond Band の場合はそれがとても自然でまさに有機的に溶け合っている印象があるんだ。特に最新アルバムの『Shining Through』は前作以上にとてもナチュラルに様々な音がひとつになっている気がしたんだけど。

Dan :そうかもしれないね。実際に『Shining Through』ではこれまでと比べてとても長いプロダクションの時間をかけているんだ。今までは1年に1枚のペースだったんだけど、2年近くも時間をかけて丁寧に創っていったんだ。

Sim :もっとだよ、3年近くかかったって!

SRB_003.JPG

W:Sim Redmond Bandの場合はどんなプロセスで音楽が創られていくんだろう。

Sim :楽曲によって創作のプロセスは違ってくるけれど、Uniitと僕がメインのパートを書くことから始まることが多いかもね。ヴォーカルとギターで創るのが多いかもしれないな。

Uniit :最も上手くいくケースは、Simがギターで曲の原型になるコードを持ってきてくれるときかしら。それを皆で聞いて仕上げていくって時がいい曲が生まれるケースが多い気がするわ。『Life Is Water』の時もこのパターンだったわね。

W:様々な音楽的な要素が繰り出されるから、ジャムバンドって紹介されることが多いと思うんだけど、Sim Redmond Bandの場合はソングライティングがとてもしっかりしていることが特徴だと思うんだ。様々な音楽的な要素をミックスさせて、外へ外へと発散させていくようにセッションするスタイルってジャムバンドの魅力なんだけど、Sim Redmond Bandはひとつのイメージに向かって様々な要素が収斂していく、色んな音、様々なリズム、メロディーがひとつまとまっていく、そんなところがとても魅力だし、その意味で本当にリベラルな音楽なんだと思う。

Dan :君のその言葉、僕が今まで聞いた中で一番いい表現だね。そうだね、僕達は自由であり、とてもリベラルな発想であり、それぞれの才能に対してリスペクトを思って音楽を創っているからね。

W:そのこともきっとイサカという町、君達が暮らしている環境がやっぱり大きな影響を与えているんだと思う。では逆に、音楽を演奏することが君達自身の生活にどんな影響を得えているんだろう?

Jordan :僕は小さいころから音楽に囲まれて成長してきた。音楽を楽しんだり演奏することはとても自然なことだったんだ。音楽を演奏していると、突然全てがパーフェクトになる瞬間を感じる時があるんだ。自分を落ち着かせ、そして自分自身の中を調和させてくれる。そんな瞬間はとてもかけがえのないものなんだ。

Sim :誰もが自分のことを表現したいって思うことがあると思う。音楽はそのためのひとつの有効な手段になり得ると思うんだ。違う世界に住んでいる人々と例え言葉が通じなくても、音楽を通してだったら、同じ気分をシェアしあうことができる。例えば、「LOVE」という感覚は言葉以上に伝わる時もあるんだ。

Dan :音楽が僕の生活に及ぼす影響、それは「音楽は僕を救ってくれる」っていうことかな。こうしている間にも世界ではいろんなことが起こっている、自分の国が世界的な戦争を引き起こしている。そのことを考えることはとても辛いんだけど、音楽を演奏しているととても平和的な気持ちを自分の中で高めることが出来るんだ。

W:同世代で共感を感じるアーティストって誰か居る?

Sim :イサカという町のローカルコミュニティには本当に優れたミュージシャン達が沢山いるんだ。僕らは「I-Town Records」というレーベルをみんなで一緒に興して、一緒にこの町自体を盛り上げていこうとしているんだ。だから僕が影響を受ける音楽も実は彼らローカル・コミュニティのミュージシャン達だったりする。一緒に演奏もするし、お互いにいい影響を与え合っているんだ。

Dan :「I-Town Records」が中心になって、いつも10とか20のバンドが一緒に競い合って、音楽以外の面でもお互いに触発しあう関係が持てているんだ。お互いにプロモートもし合うしね。それが全体としてはとてもハッピーな雰囲気を作り出している。とても強いコミュニティだし、僕らはそんな身近な仲間や環境に影響を受けているんだと思うな。

Uniit : 今世界中には色んな音楽があって、物凄い数の人たちが音楽を創っているし、わざわざ遠くに出かけていかなくてもそれを聞いたり手に入れたりすることが出来るようになったでしょ。みんなでいい音楽を交換しあったりすることも出来るしね。今は色んなところに呼ばれて演奏することが出来るけど、私達の場合はオーディエンスとの境界線が本当にないの。お互いに影響を受けたりパワーを貰ったりしながらライブをすることが出来る。私達はオーディエンスから本当にいい影響を貰っていると思う。私はそういうことが好きだな。

Asa :そうだね。特に僕らは日本人のオーディエンスからはとてもいいパワーを貰っていると感じるね。

Jorgan :僕も日本人のお客さんがとても好きだ。一番好きかもしれないな。

W:僕はね、そういう調和、「ハーモニー」がSim Redmond Bandの素晴らしいところだと思うんだ。それは耳に聞こえてくる音楽的な「ハーモニー」だけでなく、耳には聞こえてこない「ハーモニー」、つまり君達自身の生き方やアーティストとしてのスタンスの中にある「ハーモニー」なんだと思う。最後の質問なんだけど、君達にとって「ハーモニー」って何なんだろう。一人ひとりの口から聞きたいな。

Jordan :それってとてもいい質問だね。

Asa :僕にとっての「ハーモニー」は、自分自身が表現している瞬間、とてもナチュラルで自分自身が心地よく居られる瞬間のことかな。

Uniit :「ハーモニー」って音楽の中にもあるものだけど、もっといろんな意味や可能性があると私は思うの。それはものごととの関わり、そんな関係の中で影響しあいながら生まれてくるもの。人と人との関係性、人と自然や環境との関係性の中でね。私は「ハーモニー」っていうのは突然現れるものではなくて、自分で探しだしていくものだと思う。人生には良い時もあれば、悪い時もある。様々な経験や出会いがある。いろんなものと影響しあいながら私達は生きている。その中で「ハーモニー」って生まれてくるし、その意味で「ハーモニー」には本当に無限の可能性が秘めていると思う。そうやって自分自身の手で見つけていく可能性のことが「ハーモニー」だと私は思うの。

Dan :そうだね。僕らは確かに「ハーモニー」をとても大切にしているよ。Uniitが言ったようにそhれはそれは音楽のことだけには限らないね。「ハーモニー」は人々との関係においても生まれるものだから。人、音楽、平和と幸福の感情、これらが一緒になったときに、そこには「ハーモニー」が生まれるんだと思う。それは超自然的なもので、僕らの想像を超越したものなんだ。これは僕の個人的な意見だけどね。

Sim :「ハーモニー」ってなんだろうね。世界中にはいろんな人々が居るけれど、どこか共通するものとか同質性のようなものがやっぱりあると思うんだ。それが「ハーモニー」というものなのかもしれない、僕にはそんな気がするな。そんなに難しいものではなくて、とても自然なことだと思う。

Jordan :音楽が奏でる「ハーモニー」ってとても特別なものだよね。例えば日本のオーディエンスは多分僕らが歌っていることを理解してくれているように感じるんだ。言葉は分からなくても、「ハーモニー」を聞くことでそこから何かを感じ取って、同じ感覚を共有することが出来る。だから「ハーモニー」ってとってもスペシャルなものなんだと思う。

W:そうだね。僕が毎日君達の音楽を聞いているのもまさにそういう理由からだと思う。Sim Redmond Bandの音楽を聴くと何か自分の中にあるものをすっきりと調整させることが出来るんだ。

Dan :「ハーモニー」はいろんなことが出来るんだ。いろんな感情を表現することが出来る。平和な気分や愛を表現している「ハーモニー」はまさに普遍的な感覚を世界中の人に与えると思う。異なる環境で暮らしている人々をひとつにしていくことが出来ると思うよ。

W:そんな「ハーモニー」が聞こえない人たちも残念ながらやっぱりこの星には居るんだよね。だから戦争が起こったりする。

Sim: そうだね。そのことは本当に悲しい。イサカに似たような町はアメリカ中にも沢山あるんだけど、残念ながら米国の政府はこうした町の住民達を代表していないんだよ。

Dan: 本当はもっと平和的でリベラルな考え方を持っている人々がアメリカにも沢山いて、僕らもそのことを望んでいるんだ。

W:日本人って、歴史的にも文化的にも「調和」=「ハーモニー」を重んじる民族なんだと僕は日本人として思っているんだ。だから君達の音楽は日本人にはとても受け入れられると思うよ。

Uniit :初めて日本に来て私が最初に感じたのがまさにそのことだったわ。自分達の暮らしている町にとても近いって思う。私達は「ハーモニー」を重んじる日本人のことをとても尊敬しているし、そんな日本人のことを私達自身の文化にもっと反映させることが出来たらと思うの。

Dan :そうだね。「ハーモニー」って僕達を強くしてくれるし、パワーを与えてくれるエッセンスなんだよね。

SRB_001.JPG

--------------------------------------------------------------------------------

シム・レッドモンド・バンド (Sim Redmond Band)
レゲエ、フォーク、アフロビートなど日当たりの良いサウンドを内包し、低音の利いたゆっくりと踊れるジャム/インプロ・ロックにリーダーのシム・レッドモンドと“天使の歌声”とも称される透明感溢れるUniit Carruyoの涼しい歌声。シム・レッドモンド・バンドはニューヨーク郊外のIthaca(イサカ)出身。“アコースティック・ロックの作品の傑作”、“最高のローカル・バンド” 米国内で絶賛を持って迎えられた2001年のアルバム『Life Is Water』に次ぐ新作『シャイニング・スルー』(Buffalo Records)をこの2004年8月にリリースした。
メンバーは、Sim Redmond (Vo&G), Uniit Carruyo (Vo), Jordan Aceto (G), Asa Redmond (Dr), Dan Merwin (B)の5人。

Sim Redmond Band
Buffalo Records



Dialogues Archives:
西村佳哲 YOSHIAKI NISHIMURA
石垣昭子 AKIKO ISHIGAKI
セヴァン・カリス=スズキ SEVERN CULLIS-SUZUKI
ジャック・ジョンソン JACK JOHNSON
池澤夏樹 NATSUKI IKEZAWA
佐野元春 MOTOHARU SANO
木下ときわ TOKIWA KINOSHITA
ダニー・ライアン DANNY LYON
バルタバス BARTABAS
金城 男 DAN KINJYO
長島一由 KAZUYOSHI NAGASHIMA
寺本一生 ISSEI TERAMOTO
DJ KRUSH
清水勝広 KATSUHIRO SHIMIZU
ジャック・ジョンソン JACK JOHNSON
ドノヴァン・フランケンレイター DONAVON FRANKENREITER