子供達に伝えたいこと
(2006年4月21日 ワイキキ)

(2006.04.22. Waikiki Shell, Oahu, Hawaii.)
鷲尾:マウイでのコクア・フェスティバルの翌日、Kokua Foundationの活動が新聞の一面に掲載されていたね。
JJ: 新聞記事、見てくれたんだ。ありがとう。あれは『3 R’s school recycling program』というプログラムの一貫なんだよ。Reducing, Reusing、Recyclingっていう3つのRを奨励する運動で、3Rをがんばってくれた子ども達の学校に、僕が直接出掛けていってご褒美に教室で歌をうたってあげるんだ。
君が実際に学校に来て子ども達と一緒に時間を過ごしてくれるというのは、彼らにとっては最高だよね。彼らにとってはまさに夢が叶う瞬間。言葉よりも、子ども達にとってはそんなリアルな体験がとても元気にしてくれると僕は思う。
JJ: 全くその通りだと思うよ。子ども達が自分自身の眼で見るっていうこと。彼らがエキサイトしてくれる、それが真実なんだよね。僕は子ども達の目の前で「いい例」を示せる人間でありたいって思っている。そうしたリアルな体験が一生を通じて、子ども達の人生に影響するんだと思う。
僕が子供の頃、学校にハワイの有名なコメディアンのFrank De Limaが来てくれたんだ。スーパースターとしてではなくて、一人の人間として目の前に彼がいる。僕はその時本当に感動してしまって。あのことが今でも忘れられないんだ。僕もそうでありたい。僕は子ども達が自分自身の眼で見ることが重要なんだと思う。それってきっと一生忘れないよ。僕達はリアルな存在として、子ども達にExampleを示さなければならないんだ。
ところで、今、日本では出生率が低下しているってことを君は知っているかな?
JJ: 子ども達の数が減っているってこと?
そうなんだ。社会における子ども達の人口比率がどんどん下がっている。これは今日本という国にとって深刻な問題のひとつになっている。
JJ: その原因はいったい何なのだろう?
原因はひとつじゃない。いろんな要因が絡み合って結果的にこうした現象を招いている。例えば仕事をしている女性が増えたということもある。それに子供の養育費に費用が掛かるからという理由で、子どもを持ちたくないっていう親が増えていることも原因のひとつだといわれている。彼らは現在の生活レベルを落したくないって考えている。勿論、決して親だけの問題じゃなくて社会的な制度の問題もあるし、いろいろは要因があってそれが絡み合っている。
JJ: 僕は少子化には良いことと悪いことの両面があると思う。地球的な視点で見ると、人間の数は確かに増えて過ぎてしまっているといえる。そのために、地球環境汚染や温暖化の問題などとても深刻な事態が起きてしまっている。見方によっては、子どもの人口が減ることは地球にとって良いことと言えるかもしれない。
もちろん少子化に関してはネガティブなことは沢山ある。親達が子供を持たないことで、彼らがコミュニティに対して何か貢献しようという気持ちが持てなくなること。これがとても大きな問題だと僕は思うんだ。
つまり、周りの人たちに対しても、あるいは自分自身についても、そして次の世代に対しても、何かしようって気持ちが持てなくなってしまうってことなんだ。長い目で見ていけば、こうした生き方って、社会をネガティブな方向へ動かしていってしまう気がする。少子化については確かにとても難しい問題だと思う。でもその問題をちゃんと受け止めて考えていく責任が僕達にはあると思うよ。
マウイの会場で君の奥さんに会ったけれど、2人目の子供がお腹の中にいるんだよね。おめでとう。ちょっとプライベートな質問だけど、君たち家族における子育ての哲学ってどういうことだろう。尋ねてもいいかな。
JJ: 僕自身が大切に思っていることは、親は子ども達が自分自身で学び判断できるチャンスを提供してあげるだけでいいんだってことなんだ。 僕はなるべく息子には細かく干渉したりはしないようにしている。ただそっと彼の姿を見ているだけ、そうでありたいって思っている。
息子が裏庭に行って、棒っきれか何かを拾って、地面を突っついてみたり、一人遊びをしたり、蟻や昆虫が地面を這っている。僕はちょっと離れたところにいて、あまり近づいたりしないで、ただ彼の姿を遠くから見ているだけなんだ。時々あわてて走っていって、「虫さんを潰したら駄目だよ。虫さんにもっと優しくしなくちゃ。」って言わないといけないときもあるけどね。
子ども達が「僕も父と同じ一人の人間なんだ。自分なりの考えを持って生きてるんだ。」ってことに気付いていくこと。僕はそれが大切だと思っている。
子どもでいるっていうことがどういうことなのかってことはよく分かってはいるんだけど、それでも彼は父親である僕と同じ一人の人間として、彼自身の考えでいろんなものを体験したりしているんだって。
僕はただ息子が自分自身で学んでいるところを見ているだけでありたい。でも、彼のためにどうやって学べばいいのかその方法論だけは与えてあげたいと思っている。
テレビの前だけにいて、一日中テレビを見ているんじゃなくて、いろんな面白いことが家の外では起きているんだよってことを教えてあげたい。沢山一緒に旅をして、沢山見知らぬ場所に連れて行ってあげたい。日本に行くのも好きだし、ヨーロッパとか、他にもいろんなことが世界中では起きているからね。
僕自身もそうやっていろんな場所を旅することが好きだから。
お父さんの話はいつか聞いたことがあるよね。君たち兄弟の偉大な父親。
JJ: そうだね。僕の父は本当に凄い人なんだ。父は僕たち兄弟には決してサーフィンをしなさいなんて言わなかったな。僕らはいつも父がサーフィンに行く姿を見ていた。そんな父の姿を見ていて僕達はサーファーになりたいなって思ったんだ。ほら、時々子ども達に「ピアノのレッスンに行きなさい。ゴルフのレッスンに行きなさい」っていう親っているでしょ? 確かにそういわれてレッスンを受けたら子ども達はきっと上手くはなると思うんだ。でもティーンエイジャーになった時に、ふと「僕の両親は僕が本当はやりたくないと思っていたことを強制してたんだ」、なんて思うようになって、両親に反抗してしまったりする。 ピアノを弾くことは出来るかもしれないけど、ピアノを楽しんでいるかっていうと、そうとも限らない。
僕の父は決して僕達にサーフィンを強制したりはしなかった。僕達は父の姿をただ見ていたんだ。その姿を見ることが、僕達にとってはとても素晴らしいレッスンになったんだよ。
父はいつでも放任主義だった。そして僕達が自分自身で何か体験するべきだってことを教えてくれたんだ。
お父さんが教えてくれたことを、自分自身の子ども達に引き継いでいるんだね。
ジャック: そうだと思う。 結局、父が僕に教えてくれたことなんだよね。
新しいアルバム『Sing-A-Longs and Lullabies for the film Curious George』は、以前と比べてとてもビートが効いていて、ダンサンブルだけど、僕はそれが君の息子さんの影響なんじゃないかなって思ってるんだけど。それとも新しいクリエイティブスタイル?
JJ: 両方の理由が混じっているね。でも確かに息子の影響かもしれないね。息子がスタジオに入ってくると、僕は息子に歌をうたってみせるんだ。すると彼は踊り出す。でも時々スタジオを出ていっちゃうこともある。彼がそうやって出ていくのを見て、僕はもっとアップビートな曲にしなくちゃって思ったんだ。子どもの注意を引き続けるには、身体をゆすったり、歌ったり、手を叩いてみたり、そんな曲がやっぱりいいよね。多分僕は子どもに対してはファンキーになっちゃう方なんだね。
コクア・ファウンデーションの活動は、基本的に地元のローカルコミュニティのための活動だよね。コミュニティや将来のコミュニティを担う子ども達のために環境を守り続けていくこと、それがコクア・ファウンデーションの目的だと思うんだけど、例えば日本と米国とのコミュニティに対する意識について言えば、やはりそこに微妙な違いがあるとは思うんだ。米国はコミュニティ意識も高いと同時に、プライバシーについてもとても大切にする。
JJ: そうだね。 「Puttin up fences!」みたいな。
ハワイの人たちってどうなのかな。
JJ: 僕もハワイは米国のひとつの州なんだって思うと同時に、やっぱりそれ自体がまるで独立したひとつの国のようにも思えるんだ。とてもユニークだと思う。日本やオーストラリア、タヒチなどからもとても影響を受けているしね。ハワイでも「ここは俺の土地だ!」ってことを強く主張する人たちも確かにいる。でも誰もが利用できるようなパブリックスペースや国立公園もとても多いんだよね。ハワイの良いところって、そんな風に多様な様々な文化やライフスタイルがブレンドしているって所だと思うんだ。他の文化からいろんなことを学んだりする機会がとても多い。お互いに学びあうってことがないとね。君もそう思うよね?
勿論、僕もそう思ってるよ。最後にこれからのプランについて聞かせてもらえるかな。
JJ: まず僕自身の音楽活動についてだけど、しばらくツアーに出るのを休もうって思ってるんだ。もっとサーフィンを楽しむ時間も持ちたいしね。ここのところずっと忙しくて、すっかりサーフィンから遠ざかってしまっていたから。コクア・ファウンデーションの活動については、ちょうど来年の計画を話しはじめたところなんだ。僕はもっと学校を訪問する機会を増やしたいって思っている。学校に行って子ども達の前で音楽を演奏したり、それに「farm-to-school」のような活動をもっと広げて行きたいって思ってる。「farm-to-school」は子ども達と地元のコミュニティとが協力して有機栽培の野菜を育てて、給食にして食べようってプログラムなんだけど、来年は5つの学校が「farm-to-school」に参加してくれることになっている。これはもっともっと広げて行きたいよね。

(2006.04.19. Maui Arts&cultural center, Maui, Hawaii.)
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Kokua Hawai'i Foundation
ジャック・ジョンソンと彼のパートナーであるキム、そして地元コミュニティの仲間たちとで立ち上げたNPO団体。KOKUAとはハワイ語で「助けあい」を意味することばで、ひとりひとりが自分にできることを考え、行動することで、後世に美しいハワイを引き継ぐことができるようにという思いが込められている。団体の目的は、ハワイの環境保全と、子どもたちの環境教育プログラムの実践。
たとえば、Reducing, Reusing、Recyclingの3つのRを奨励する“3R’s school recycling program”という活動は、学校単位で3R活動の成果を競いあい、がんばった子どもたちのところには、ジャックが自らスクール・ライブに来てくれるというもの。“Farm To School”というプログラムは、地域の農家と協働して有機野菜を育て、皆で給食の時間に食べてみようというもの。このように、子どもたち、学校、コミュニティを巻きこみながらの実体験に根ざした環境教育プログラムを積極的に展開している。
また年に一度、ジャックや仲間のアーティストが中心となって“KOKUA FESTIVAL”というライブイベントを実施、このイベントの収益金はすべてKokua Hawai’i Foundation に寄付され、子どもたちの未来のために活かされている。
YOSHIAKI NISHIMURA (designer)
AKIKO ISHIGAKI (artist)
SEVERN CULLIS-SUZUKI (environmental activist)
NATSUKI IKEZAWA (novelist/poet)
SIM REDMOND BAND (musician)
MOTOHARU SANO (musician/poet)
TOKIWA KINOSHITA (musician)
DANNY LYON (photographer)
BARTABAS (artist/Zingaro)
DAN KINJYO (cook/FUAN)
KAZUYOSHI NAGASHIMA (politician)
ISSEI TERAMOTO (galleriest)
DJ KRUSH (artist)
KATSUHIRO SHIMIZU (architect)
JACK JOHNSON (musician)
DONAVON FRANKENREITER (musician)
