セヴァン・カリス=スズキ SEVERN CULLIS-SUZUKI

『Be The Change』~あなた自身が世の中を変える変化そのものになること。

「あなたがた大人たちがしていることによって私たちは夜毎泣いています。あなたがたは私たちを愛していると言ってくれます。でも私はあなたがたに問いかけたい。もしもその言葉が本当にならば、その言葉が本当だということを行動そのもので示して欲しいのです。(What you do makes me cry at night. you grown ups say you love us. I challenge you, please make your actions reflect your words. )」

1992年6月、ブラジル、リオ・デ・ジャネイロで開催された「地球環境サミット」で、当時12歳だったセヴァン・スズキが行ったわずか6分間のスピーチは、会場に集った各国の首脳たちに強烈な衝動を与えた。世界の指導者と呼ばれる大人たちが環境問題に対してこれまで行ってきたこと(あるいは行わなかったこと)が一体何だったのか。未来とは誰のものなのか。そう鋭く問いかけた彼女の言葉は、一人の少女の訴えに終わらない、いわばこの地球を継ぐ新しい世代、未来の世代から届けられたメッセージでもあった。やがて彼女のスピーチは、環境問題に関わる人々を中心に世界各地へと広がっていくことになる。彼女のスピーチを傍聴した当時米国上院議員であったアル・ゴア氏は「サミットでの最も重要なスピーチだった」と語った。

あれから15年後。2008年7月7日にG8サミットが開催される北海道・洞爺湖の湖畔に彼女は立っている。すぐ傍の水面をつがいの白鳥が静かに泳いでいる。湖の中央に浮かぶ中島は初冬の穏やかな夕陽に照らされ、空の青にたっぷりと染まった湖とのコントラストがとても美しい。 「BC(彼女の故郷、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州)にそっくりね。」今、日本の若い世代の人たちに伝えたいことってどんなことだろうと彼女に問いかけると、ちょっと待って、ちゃんと考えるからと前置きして彼女は一人で湖に向かい遠くを眺めた。そして僕の方に振り向いた。あのとても魅力的な笑顔で。夕暮れの光が彼女の笑顔を橙色に染めた。

--------------------------------------------------------------------------------------

severn_001.jpg

確かにリオでの体験は私の人生を変える大きな出来事でした。そしてこの15年間、私は本当に沢山のことを学んできた。同時にこの15年間で、世界そのものも大きく変わったのも事実です。グローバル化が進み、今では誰もがグローバル経済という枠組みの中で暮らすようになっています。例えば日本で暮らしている人でも、洋服を買うことを通じて中国の工場で働いている人たちと、チョコレートを食べることでアフリカのどこかでカカオを摘んでいる幼児労働者と繋がっています。意識するしないにかかわらず、今私たちは世界と密接にかかわりながら日々を生きるようになっている。ひとつの家族、運命共同体のように。そして私たち誰もが一人残らず、毎日の暮らしによって世界の姿を少しずつ変え続けているのです。

あの時、リオで私が問いかけたのは、「未来はいったい誰のなの?」ということでした。そしてそれは私たち若い世代、あるいはさらにその子供達の世代のものなのだということを大人たち、世界のリーダーと呼ばれる人たちに認識してもらうためでした。しかし、今はそれだけでは済まされない時代になってきていると思います。
私たちが日常の中で何気なく行っていることが、世界の重要な岐路を決める時代になっています。気候変動(Climate Change)や地球温暖化(Global Worming)も、グローバル化した世界に生きている私たち一人ひとりの毎日の暮らしの積み重ねによって起きていることであり、誰一人例外なく私たち全員に共通した問題なのです。私たち一人ひとりが何気なく行っている些細なことがこの地球の未来を決めてしまう時代。こんなことはこれまでの人類の歴史の中で一度もなかったことです。誰もが当事者なのであり、もう誰かに「問題を解決して」とお願いしたり、期待したりする時代ではなくなっているのです。
つまり、それは逆にいえば(少々古い言い方ですが)、私たち一人ひとりが「革命家」である時代になったということだとも言えます。
『Be The Change』という言葉を聴いたことありますか? これはマハトマ・ガンジーが言った言葉なのですが、私はこの言葉が好きなんです。誰かのせいにしたりしない。誰かに頼んだりしない。あなたが、あなたが生きている場所で出来ることをやるだけ。そしてあなた自身が変わること、世の中を変える変化そのものにあなた自身がなること、そういう意味です。
『Be The Change』、これがこれからは合言葉だと思います。そういう意識がこれからはとても大切です。私たち一人ひとりが出来ること。私たち一人ひとりが変わること。
そして、そう考えることで、むしろまだ私たちに出来ることが沢山あることに気付くことが出来ると思います。

severn_002.jpg

少しだけ例を挙げてみましょう。まず大切なのは「ローカル」というキーワード。
地域に生活の中心を戻していくこと。食べ物も着る物もなるべく地域のものにしていくこと。少なくとも国産にすること。そして地元でとれるその時々の旬の食材を食べること。それから地域の経済が活性化するために応援すること。地域コミュニティの結びつきをもう一度編みなおし、一緒に協力して働いたり、生活するという生き方を取り戻していくこと。そのためにも地域に対する誇りを誰もが取り戻すことが大切です。
コミュニティ、誇り、そして希望。こうしたことはとても重要なキーワードになると思います。

もちろん、環境に与える負荷をなるべく減らしていく生き方をすることも挙げられます。
ゴミを出さないこと。パッケージを減らすこと。マイ箸やマイバッグを持つこと。これらは当たり前のことだけど、ちゃんと習慣化させなければなりません。
日本は過去に自然と一体となって生きる思想や文化が息づいていた場所でしたよね。シンプルであること、簡素であることを尊重するような文化を取り戻していくことは、他のこの国よりも日本人には出来ることだと思います。

それから「創造力」。
これまで経済は「環境を壊すもの」と言われてきたけれど、しかしそうではなく「環境に貢献する新しい経済」を発想することがこれからは大切です。そのためにデザインの力や新しいテクノロジーを活かして新しい解決策を生み出すこと、つまり創造力やクリエイティビティを発揮することも重要な環境問題への解決策になります。一人ひとりが創造力を持って発想し、そうしたアイデアを共有しあうこと。例えば、インターネットもアイデアの共有のためにはとても有効なツールとして利用できるはずです。

そして、「会話をすること」です。
家族の人、近所の人たち、友達たち、誰でもいいのです、いろいろな人たちと地球温暖化について「会話」を始めることです。「知ってる?」「心配?」「どうすると良いと思う?」どんなことでもいいんです。そして決して相手のことを怒ったり、責めたりしないこと。全ての人が同じ問題にチャレンジし始めたんだということを分かりあうことが大切なのだから。
いろいろな人と会話をすることは、私たち一人ひとりの可能性を広げてくれる機会にもなりますね。食物を育てられる人から、自分で洋服を作ることが出来る人から、地域の経済に貢献することが出来る方法を知っている人から、私たちは周りにいる人々から会話を通して本当に沢山のことを学ぶことが出来ます。大人の人は子供たちと会話して下さい。子供たちは大人が思いもつかないようなアイデアを発想する力を持っているから。会話をすることは、時には驚くべき冒険になることだってあるんです。
こんな風に発想していくと、まだまだ私たち一人ひとりに出来ることが沢山あることに気付くでしょう。そして環境の問題とは、私たちがどんな生き方を選びとるのかということであり、つまり「文化」の問題であるということが分かると思います。

確かに私たちが直面している問題はとても大きくて気が滅入りそうになる時もあります。これまで人類の歴史において、私たちの世代ほど大きな変化を乗り越えていかなければならない世代はなかったことでしょう。
でもこの挑戦は、本当はとても楽しいものであるはずと、私は思っています。それは、21世紀に生きる人間として、もう一度生きる意味を問い直すことであり、自分にとって本当に大切だと感じることを選び、祝福することなのですから。
それはとても楽しくて、とても素晴らしいチャンレンジなんです。

そして私は、まだ私たちにはもの凄い力が残っていると確信しています。
それは一体何だと思いますか? それは「世代間の間にある愛情(Inter-generational Love)」です。親が子供に対して持つ愛情。それ以上にパワフルなものってこの世にあるでしょうか。私が12歳の時にリオで行ったスピーチになぜあんなに多くの人々が感動してくれたのか。それは私のスピーチを聞いた大人たちが、親たちが持つ愛情を思い起こしたからではないでしょうか。
「世代間の間にある愛情(Inter-generational Love)」があればこそ、地球温暖化をなんとかしなければと誰もが思うはずです。今日私たちが行っていることが、次の世代、つまり私たちの子供の世代の未来を決めてしまうのです。だから今、私たちがお互いに伝え合うべきことは「世代間の間にある愛情(Inter-generational Love)」だと私は思います。
地球温暖化とは、上の世代が下の世代に残した負債であり、「世代間の不正(Inter generational Injustice)」、あるいは世代間の犯罪だったと言えます。
そして、「世代間の間にある愛情(Inter-generational Love)」こそが、これまでの人々が行ってきた世代間の不正、犯罪に対する解毒剤であり、私たちにとっての回答なのです。
私たちが地球温暖化のために立ち上がらなければならないのは、この「世代間の間にある愛情(Inter-generational Love)」のためなのです。 (2007年10月31日)

※「You must be the change you wish to see in the world. (この世界に変化を望むのなら、自分がそのように変わらなくてはなりません。) 」 (Mahatma Gandhi ハマトマ・ガンジー)

severn_003.jpg

--------------------------------------------------------------------------------------------

セヴァン・カリス・スズキ Severn Cullis-Suzuki
1979年生まれ。カナダ在住の日系4世。9歳で環境学習グループ、E.C.O.(The Environmental Children's organization)を立ち上げ、地域の環境保全活動に取り組む。12歳のとき、ブラジル・リオデジャネイロで開催された「地球サミット」に自分たちで旅費を集めて参加。サミット最終日に「子ども代表」として各国首脳の前で彼女が行った6分間のスピーチは、「リオの伝説のスピーチ」として語り継がれている。以後、「グローバル500賞」受賞、国連の「地球憲章」起草メンバーに就任するなど積極的な活動を続けている。2002年イエール大学卒業後、ビクトリア大学大学院にて民族生態学の学位を取得。日本語での著書に『あなたが世界を変える日』(学陽書房)、『私と地球の約束~セヴァンのわくわくエコライフ』(大月書店)等。



Dialogues Archives:
西村佳哲 YOSHIAKI NISHIMURA
石垣昭子 AKIKO ISHIGAKI
ジャック・ジョンソン JACK JOHNSON
池澤夏樹 NATSUKI IKEZAWA
シム レッドモンド バンド SIM REDMOND BAND
佐野元春 MOTOHARU SANO
木下ときわ TOKIWA KINOSHITA
ダニー・ライアン DANNY LYON
バルタバス BARTABAS
金城 男 DAN KINJYO
長島一由 KAZUYOSHI NAGASHIMA
寺本一生 ISSEI TERAMOTO
DJ KRUSH
清水勝広 KATSUHIRO SHIMIZU
ジャック・ジョンソン JACK JOHNSON
ドノヴァン・フランケンレイター DONAVON FRANKENREITER