2004.08.28 (Sat)  唄者

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 夏休み最後の土曜日は、台風16号が近づいているために昼過ぎからずっと雨が降り続いていた。それでもずっと楽しみに待っていた大島保克さんのライブを観るために葉山・一色海岸のBLUEMOONまでクルマを飛ばした。 大島保克さんという唄者(うたじゃ)を知ったのは2年前、それ以来彼の『島時間』というアルバムは年中うちの家のヘビーローテーションであり続けている。そして、ようやくその歌を生で聴く機会に巡りあえた。
 1曲目、彼の声が小さな海の家に響いた瞬間、それはまるで一筋の風が僕の身体の中を吹き抜けたようだった。全身がゾクゾクとした。そして僕はいつもより荒れた波が打ち寄せる音を背後に聞きながら、たっぷり2時間もの間、彼の素晴らしい声と三弦に酔いしれた。本当に素晴らしいライブだった。
 今日のライブは、前半は沖縄の各地方で生まれた島唄、後半は大島さんのオリジナルの楽曲という2部構成だった。その中で、大島さんは八重山を代表する民謡『高那節』を唄ったのだが、この曲、既に今から100年前には廃村となった西表島の「高那村」で生まれたという曲で、今でも半分以上歌詞の意味が解明されておらず、口承によって200年もの間歌い継がれて来たそうだ。 そしてその曲を今日、この葉山の海岸で聞いているということに、僕は何かこれまでの他のライブでは体験したことのない心の高揚を感じていた。
 大島さんはそんな何百年もの長い時間の流れの中で唄者としての自分の存在を見つめながら唄い続けている。そして永遠の時間の流れの中の「この日、この場所」を、僕らは大島さんという存在を媒介として共有しているのだ。それはまるで自分の身体をそっと大きな時間の波に預けてしまうような心地良さを伴う不思議な体験だった。
 今日の十三夜の月はどんよりした雨雲の背後に隠れてしまっていた。
来年、またこの同じ場所で大島さんの唄を聴くことをずっと楽しみに待っていたいと思う。

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